幾何公差って?

定義・種類・記号の意味について

幾何公差とは?意図した品質を確実に実現するための図面指示

幾何公差は、図面上で部品の形状に関する許容される誤差の範囲を示すもので、設計通りの品質を維持するために欠かせない要素です。この記事では、幾何公差の基本的な定義から種類・記号の意味までをわかりやすく解説し、図面への正しい適用方法についても詳しくご紹介します。

幾何公差とは?

幾何公差は、「寸法公差(サイズ公差)」と比較することで理解しやすくなります。寸法公差が「点から点までの距離(長さ)」を管理するのに対し、幾何公差は形そのもの、つまりジオメトリに対してどれだけのズレが許容されるかを定めるものです。そのため、寸法公差だけでは図面通りであっても実際の形状が意図から外れる可能性がありますが、幾何公差を適用することで、製品品質を確実にコントロールできるのです。

ISO・JIS による定義

JIS B 0021:1998 の幾何公差の定義は以下のように規定されています。

4-1. 形体に指示した幾何公差は、その中に形体が含まれる公差域を定義する。
4-2. 形体とは表面、穴、溝、ねじ山、面取り部分又は輪郭のような加工物の特定の特性の部分であり、
これらの形体は、現実に存在しているもの(例えば、円筒の外側表面)又は派生したもの(例えば、軸線又は中心平面)である。

(出典:日本産業標準調査会 JISリスト)

つまり、CADモデルでいうところの「面」や「軸」が幾何公差の対象となり、それらの変
位やズレの範囲を規定するのが幾何公差です。また、国際規格ISO 1101(最新版は2017
年)にも幾何公差の定義があり、日本のJIS規格もこれに極力準拠しています。一方、米国
ではASME Y14.5が基準として採用されています。

寸法公差(サイズ公差)との違い

「寸法公差」の方がなじみのある方も多いかもしれませんが、JIS B 0420(2016年)により、「サイズ公差」という用語に整理され、幾何公差と明確に区別されるようになりました。
サイズ公差:部品の長さや幅など大きさに関する公差
幾何公差:形状・姿勢・位置・振れといった幾何学的要素に関する公差
これらは排他的なものではなく、併用して図面に記載することで、より正確な設計意図を伝えることができます。

幾何公差の分類と種類(形状・姿勢・位置・振れ)

幾何公差は、形状に関する誤差の種類によって大きく4つに分類されます。
形状公差:真直度・平面度・真円度・円筒度
姿勢公差:平行度・直角度・傾斜度・輪郭度(線/面)
位置公差:位置度・同軸度・対称度
振れ公差:円周振れ・全振れ
また、幾何公差は対象となる形体の種類によって「単独形体」と「関連形体」に分かれます。

単独形体(データム不要)

単独形体とは、他の形体との関連なしに単体で規定されるものです。代表的なものは「形状公差」に属する要素です。図面上では、これらにはデータム指示が不要(=”否”)とされます。
例:平面度
平面度は、2つの平行な平面の間にその面が収まっているかを基準に判断されます。たとえ傾いていても、その間隔(距離t)が許容内であれば合格です。他の形体との関係性は求められません。
例:円筒度
円筒度は、同軸の2本の円筒の間に全体が収まっているかを評価します。これも他形体との関連付けはなく、公差記号に”φ”を誤って付けないよう注意が必要です(円筒度はあくまで形状のみの制御です)。

関連形体(データム必要)

関連形体は、他の形体(=データム)との関係に基づいて公差が決定されます。「姿勢」「位置」「振れ」の各公差がこれに該当し、図面上ではデータム指示が必要(=”要”)とされます。

姿勢公差

姿勢公差は、形体が特定の基準(データム)に対してどのような向きを持つかを規定します。
平行度:基準と平行であること
直角度:基準に対して直角であること
傾斜度:特定の角度を維持していること

位置公差

位置公差は、特定の位置を理想寸法(TED)に基づいて規定します。よく使われる位置度は、「φ」を使って穴の中心軸が同軸の円筒内に収まるように制御します。なお、位置度のみ「データムの有無が両方記載」されているのは、穴のピッチなどのように基準が不要なケースもあるためです。

振れ公差

振れ公差は、主に回転体に対して使われます。
円周振れ:回転時の断面(円周)上でのズレを規定全振れ:円筒全体の面に対してのブレを規定
これらは、回転軸を基準に制御するか、回転した表面全体を基準にするかで評価の観点が異なります。例えば、楕円形状では円筒度は許容されても、振れ公差では不合格となるケースもあります。

幾何公差のメリットとその必要性

幾何公差を使用する最大の利点は、設計意図をより正確に形状として伝達できることです。寸法公差が「点と点の距離」を管理するのに対し、幾何公差は形体そのものの姿勢や位置、精度を的確に定義できるため、意図した形状をより厳密に製造現場へ伝えることが可能になります。日本国内の製造業では、設計者の意図を汲んで精度よく仕上げる文化がありますが、海外では図面に明記された内容だけを忠実に再現するケースが一般的です。そのため、幾何公差が明確に図示されていない場合、設計と異なる部品が納品されるなどのトラブルが発生することもあります。

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