SDGsの目標を達成するためには、製造業の積極的な取り
組みが非常に重要です。
ただ、具体的にどのように取り組むべきかや、どの目標
が製造業に関連しているのかを理解するのは難しいこと
もあります。
本記事では、製造業がSDGsに貢献するための実際の事例
を紹介します。製造業とSDGsのつながりや、特に取り組
みやすいSDGsの目標についても詳しく解説していますの
で、ぜひご覧ください。
SDGsとは?
地球環境の改善に向けて全世界が取り組むべき17のゴール
SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択された、地球規模での持続可能な発展を目指すための指針です。「社会」「経済」「環境」の3つの側面から成る17の目標と169の具体的ターゲットが設定されており、私たち一人ひとりができることから取り組むことで、2030年までに持続可能かつ豊かな未来を築くことを目指しています。
法的な強制力はありませんが、企業、行政、個人を含むすべてのステークホルダーが取り組む目標として、先進国を含む全世界で具体的な行動が求められている目標です。
製造業と関係の深いSDGsの目標4つ
- 目標7:エネルギー
- 目標8:働きがいも経済成長も
- 目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう
- 目標12:つくる責任・つかう責任
参照:持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組 | 総務省
また、製造業が現場レベルで優先的に取り組むべきSDGsの項目として
2022年のものづくり白書で国が重要視したポイントに集約されています。
まずは、取り組みやすく、効果が期待できる項目から着手していきましょう。
- 多様な人材の活躍(女性、障がい者、高齢者の活用)、人権の尊重
女性の活躍支援や障がい者・高齢者の雇用促進、フェアトレードに基づいた公平な調達が求められています。
- デジタル活用、DX推進
ペーパーレス化や基幹システムの更新、EDIとの連携による効率的な需給管理、さらにRPAやAIを活用した業務効率化が効果的です。
- カーボンニュートラル(CO2削減)
CO2削減のため、省人化やFA化の推進、グリーンエネルギーの導入、省エネ対策の強化、そしてサーキュラーエコノミーの取り組みが重要です。
製造業でSDGsの取り組みが求められるのは何故?
CO2排出量が高く、女性の活躍推進が他業界に比べて遅れている製造業は、SDGsへの対応が特に重要とされています。
2050年までにカーボンニュートラル(CO2排出量の実質ゼロ)を目指す国や地域は144カ国に上りますが、その中で日本は世界で6番目に多いCO2排出国であり、製造業の工場から排出される量が全体の約4分の1を占めています。エネルギー価格高騰リスクへの対応も踏まえ、エネルギーの安定供給先の確保や再生可能エネルギーへの転換といったCO2削減が急務とされています。
さらに、製造業における女性の従業者比率は、中小企業で40%程度、大企業で20%程度にとどまり、軽作業が多い繊維製造や食品製造などの業種が全体の比率を押し上げています。
一方で、鉄鋼業など体力を要する業種では女性の比率が低い傾向にあります。
製造業において、社会・文化・経済の各視点から持続可能な生産を実現するためには、多様な人材が活躍できる環境が求められています。
さらに、環境や人権、企業統治を重視するESG投資の潮流が強まる中で、こうした要素に配慮しない企業は投資や融資を受けにくくなっており、持続可能な事業活動へのシフトが企業にとって重要な課題となっています。
取り組み1:目標7.エネルギー
この目標が目指すのは、「すべての人が、手頃で安全、かつ現代的なエネルギーを持続的に利用できる環境を実現すること」です。
製造業が「目標7. エネルギー」に貢献するためにできるのは、「エネルギーの削減」「エネルギーの創出」「エネルギー効率の向上」の3つのアプローチです。
具体的な取り組み例として、以下のようなものがあります。
- 社内の照明をLEDに置き換えて電力消費を削減
- 輸送プロセスの効率化による燃料使用量の削減
- エネルギー効率の高い製品の製造・販売
- 太陽光発電や風力発電を利用した再生可能エネルギーの導入
- コージェネレーションシステムによるエネルギー効率の向上
特に、社内のLED照明化は簡単に始められ、エネルギー消費削減に大きな効果が期待できる取り組みです。
取り組み2:目標8.働きがいも経済成長も
目標8「働きがいも経済成長も」が目指すのは、「すべての人の生活を向上させ、安定した経済成長を促し、誰もが人間らしく生産的に働ける社会の実現」です。
製造業がこの目標に向けて行う取り組みとして、以下が挙げられます。
- デジタル技術の導入による生産性の向上
- 業務のシステム化による効率アップと従業員の負担軽減
- 労働環境の改善を通じた安全性と生産性の向上
- 社内データを活用し、従業員のスキル向上を目的とした教育の実施
製造業が生産性を大きく向上させ、持続的な経営基盤を築くためには、デジタル技術とシステムの活用が欠かせません。
取り組み3:目標9.産業と技術革新の基盤をつくろう
目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」では、「災害に強いインフラを整備し、新しい技術を開発し、全ての人に貢献する持続可能な産業化」を目指しています。
製造業がこの目標に向けて取り組める具体策として、次の4点が挙げられます。
- 既存システムのクラウド化によるITインフラの強化
- インフラのセキュリティ対策強化
- 組織改革やDXの推進によるイノベーションの促進
- サービタイゼーションの推進
道路や電力、水道といった物理的なインフラ整備は一部の製造業に限られますが、ITインフラの強化は多くの企業で必要とされています。まずは自社内のITインフラ強化と技術革新の基盤作りから着手してみてはいかがでしょうか。
取り組み4:目標12.つくる責任・つかう責任
目標12「つくる責任・つかう責任」が目指すのは、「生産者も消費者も、地球環境や人々の健康を守るために責任ある行動をとること」です。
製造業がこの目標に向けて実践できる取り組みとして、以下のような例があります。
- 不良率を改善し、廃棄物の削減
- 長持ちする製品の開発
- 過剰包装や廃棄ロスの削減
- 汚染物質への対策強化
製造業には、環境と健康に配慮した「つくる側」としての責任が求められています。まずは、自社事業と関わりが深い不良率の改善から着手してみてはいかがでしょうか。
製造業がSDGsに取り組むメリット
SDGsへの取り組みは、ステークホルダーにとって強力なアピールポイントとなります。さ
らに、SDGsを基盤にビジネスモデルを見直すことで新たな付加価値が創出され、企業とし
ての競争力が高まり、選ばれる存在へと成長することが期待されます。
- SDGs対応の商品や製品の投入により、新たな市場への展開が可能になる
- SDGsに取り組む企業としての価値が明確になり、金融機関を含むステークホルダーからの信頼が高まる
- 性能や効率が高い設備の導入や、女性が活躍しやすい職場環境の整備が進むことで、生産性の向上が期待される
- SDGsと既存事業の融合により、イノベーションの機会が生まれる
- 持続可能な生産体制や組織の構築が、BCP対策としても役立つ