どうして法学部を選んだのかについては、思い出すのも恥ずかしいので、できれば割愛したいが、まあ高校時代に見た弁護士モノのドラマの影響(もうそれだけで充分に恥ずかしい)。

そんな動機だから一応は弁護士を目指していたという事になるのだろうけど、入れたのはさして有名でもない大学の法学部だったし、いつのまにかそんな気持ちもなくなっていた。弁護士になった同級生もいたようだけど、何せ学生時代はバイトとバンドの活動に明け暮れていて、絵にかいたような目標を持っていない若者だった。音楽でプロを目指そうなんて大それたことは考えていなかったし、いつまでも遊んでられないな、とは思いながら、自分が何をしたいのか分からなくて、ただ流されていた。

最初の就職は法律とはまるで関係ない食品会社の経理だったし、うちの会社に来てからも初めは経理で、その後総務的な事を任されるようになって契約関係、保険関係も担当したけど、法務部を設立してそこを任されるようになったのは不思議な因果だと思う。

その時になって、自分も在学中に行政書士や司法書士などの資格取得をしておけば良かったと思ったりした事を思い出す。司法試験を受けるような優秀な学生が力試しに受けるような資格だったから、その気もない私には何の興味も持たなかった。世の中には、そうした資格は取りながら司法試験の方は途中で挫折してしまった人が少なくないだろう。事務所を開設した人も居るだろうけど、普通にサラリーマンをしている人の方が多いに違いない。

私のように最初から諦めていた方の中にも元々法に関する興味がありながら民間企業に就職後にそうした気持ちを心の奥にしまい込んでいる方もいるだろう。そういう意味では、私は幸運だったと思う。この会社でなければ経理のままで法務に関わる機会など与えられなかったかもしれないからだ。もちろん経理の仕事も大切な仕事だし、嫌いな訳ではなかったのだけど、法改正を前にして会社が対応を整備している今、何冊もの本を読んで勉強したり、外部のセミナーに参加したりしながらいろいろ調べている自分に満足している。
社会人になってから改めて挑戦するには司法試験はハードルが高く自信もないし、行政書士や司法書士の資格を取っても自分で事務所を開設するまでの覚悟は今も無い。でも最近、企業法務という仕事が、会社を守る、社員を守る目的を持つと同時に、会社のルールを整備する仕事が、会社そのものの“カラー”みたいなものをつくり出しているのだな、と気づき、「ああ、自分のやりたかった事が出来ているよな」と感じている。
経理にいるときに新しい事業所の立ち上げで製造現場の応援に行っていた事もあるのだけど、そこで一緒に働いた社員とは今でも連絡を取り合っている。現場の苦労やものづくりの楽しさ、J’s Factoryでいろんな事を経験してきた事がいまの仕事にプラスになっていると思う。自分の人間として、社会人としての幅も広げられ、案件に対する自分の中からの答えの引き出しも増えている。
J’s Factoryの法務の仕事、実務未経験者にも挑戦して欲しい。その中には私のようにドラマがきっかけで法学部にとう人も居るだろうか？一緒に仕事が出来たらそれも楽しそうだ。